やまがたの若者向け地域活動情報紙WA-CHA   第4号

対談「地元で生きる、はじめる、おこす」佐藤裕太氏×伊藤大貴氏×難波竜次氏

対談した人

佐藤 裕太 氏

若者サポーター、認定新規就農者
あまるめゲストハウス MOKKEHOUSEオーナー 
庄内町出身。25歳で農業を継ぎ、同時期にゲストハウス「MOKKEHOUSE」をオープン。現在は農業を主事業として、事業拡大を図っている。


伊藤 大貴 氏

若者サポーター、合同会社dano 共同代表
鶴岡市(旧朝日村)出身。25歳でUターンして合同会社danoを設立する。デジタルマーケティングや遊佐高校での場づくり支援などを主に行う。


難波 竜次 氏

若者サポーター、合同会社dano 共同代表
YouTuber アフロ りゅうじ
鶴岡市(旧朝日村)出身。「YouTuber アフロ りゅうじ」として、地域の魅力発信やイベント出演などを通して、山形の魅力を紹介している。

 

地元庄内に「もっけだの~」
好きだから、残していくためにを考える

 県外へ行く若者も多い中、地元を拠点に活動する3名の若者がいます。今回は「地元で生きる、はじめる、おこす」をテーマに、同級生であり、それぞれ事業を興している佐藤裕太さん、伊藤大貴さん、そして難波竜次さんに、なぜ地元なのか、地元で生きることの魅力やリアルを聞きました。

佐藤

主な仕事は農業です。今は米や大豆、花、野菜など32ヘクタールを管理しています。実家が農家なんですけど、自分の代で法人経営に切り替えていこうと準備中です。ほかに、余目駅の近くで「あまるめゲストハウスMOKKEHOUSE」の運営もしています。庄内への観光客を受け入れたり、同級生で集まったりするほか、最近は保育園留学の受け入れも始めました。

難波

合同会社danoを大貴と一緒にやっています。「10年後の、仲間をつくる。100年後へ、念いをつむぐ。」をテーマに仲間づくりやデジタルマーケティングをする会社です。個人の仕事は、「ユーチューバーアフロりゅうじ」としての活動やWEBコンテンツの制作ですね。最近は行政と組んで、ふるさとの魅力を発信するものが多いです。タレントとしてイベントに呼ばれることもあります。

伊藤

合同会社danoを興して5年になります。主な事業は、情報発信支援、デジタルマーケティングの伴走支援です。さらに、この地域の力を活かし、次世代の可能性を紡ぎだしていくための取り組みとして、遊佐町で県外留学生の受け入れを行う「遊佐高校魅力化プロジェクト」のプロジェクトファシリテーターや、対話と内省の場づくりの事業を行っています。さっき竜次から仲間づくりというテーマがありましたけど、雇われていようが起業していようが、自分の物語を自分で生きている、主人公的な感覚の人が増えれば、地域は勝手に面白くなるんじゃないかなと思って活動しています

 

同級生との偶然の巡り合わせ

伊藤

竜次とは小学生からの付き合い。

佐藤

俺と大貴は高校と大学が同じで、竜次とは同じ学校になったことはないけど、知り合ったのは高校生の時。でも、大貴に紹介されたわけじゃないんだよな。

伊藤

竜次はやっかいで(笑)。ぼくらの高校の学園祭に竜次が遊びに来て、同じテンションだった裕太と仲良くなってた。

難波

そうそう。裕太との共通の友達もいるし。俺は高校卒業後に就職して、米沢に住み始めたんだけど、1年くらいした時かな、山形大学工学部だった大貴とばったり会って。

伊藤

ほんとたまたまね。ぼくも竜次が米沢いるの知らなかったし。その時すでに地域活動してたから、竜次を山大生向けのイベントに呼んだり、米沢にゲストハウスを作る話があったから、誘ったりしてね。ぼくらが入学した時期は、ちょうど東日本大震災の後で、社会的にいろんな場が開かれていて、成長機会に溢れてたんです。周囲の人から面倒を見てもらいながら、地域に入っていって、こういう生き方いいなって。竜次も「地元で何かやりたい」って言ってたから、共通の話題で盛り上がってた。
 裕太とは、入学式で再会しましたね。1年生の時に地域活動サークル「チーム道草」を立ち上げたのもあって、入学式で成果発表をしたんですよ。そしたら大勢いる新入生の、一番前に裕太が座ってて。「なんでいるの!?」って(笑)。

佐藤

俺は一浪して入ったけど、大貴がいるの知らなかったし、たまたまね。

伊藤

話してみたら浪人時代にいい出会いをしたみたいで、地域活動系の話に乗ってきてくれるのが嬉しくて、ことあるごとに「裕太、空いてる?」って。

佐藤

それ嬉しかったな。高校の時は別に仲良くなかったけど、3年間同じクラスだったし、縁はずっと続いてたのかな
 自分にとっての転機は浪人時代。通っていた予備校で、毎朝人生の哲学を学ぶ倫理の授業があって、自分は何をしていきたいかを考える時間があったんです。庄内の良いところを学ぶ授業もあって、その2つがあったから、俺はこれからどうやって生きていこうかというのを本気で考えることができたなって。うちは農家だから、地元に貢献するなら、農業を継いで、農業を通じて庄内を元気にしていきたいと思うようになりました。

 

ゲストハウスづくりでパワー集結

佐藤

ゲストハウスを作ったきっかけは、まあ、大失恋とかもあるんだけど(笑)、自分がゲストハウスに泊まった経験から、農家が農業以外で場を作って、そこに人が集まるのが面白いなという想いがあったんです。だから、失恋の悲しみをバネに走り出して、余目駅の近くの土地付き10万円の物件を買って、とりあえずクラウドファンディングをしました。目的は3つ。庄内の農業を元気にするためには、まず農家が元気にならないといけないというのがひとつ。2つ目が、移住定住を増やしたいということ。そして3つ目が、自分の仲間を増やしたいということ。自分も、ゲストハウスがあることで同じ想いを持った人たちと繋がって仲間を作りたいというのもありました。

伊藤

立地が良くて、集まれる公民館のようでもあるし、旅行客にとっては町へ繰り出す拠点にもなっているよな。

佐藤

作る時も2人に助けてもらいました。不要な小屋の解体の時とか、どうしたらいいかわからなくて、金づち1本で向かったからね。

難波

屋根を剥がすのに釘抜きしなきゃいけなくてね。バールとトンカチ持ってとりあえず登ったら、隣のおっちゃんがヘルメット貸してくれたんよ、野球の(笑)。解体するときは同級生で集まって、引っ張って倒した。

佐藤

久々に会うような同級生も協力してくれて、大きな活動の輪になったっけ。

難波

そうやってたまに会うから、頑張っている同級生を意識して、俺も頑張ろうって思えるのかも。

 

故郷と関わり続ける理由と意味

伊藤

起業のきっかけは、地元がめちゃくちゃ好きだということと、村(旧朝日村※)がなくなった悔しさ。自分の地元が緩やかに死に向かっているんじゃないか、大事な場所が消えてしまうのではないかという危機感があった。とはいえ就活の時期になると、今までやっていた活動と切り離してどこに就職するのかという話になる。だから、学生の頃に抱いていた「地域を無くしたくない」というのは「地域に仕事をつくる」ことで解決するのではと思い、地元でお金を回すことが地元に住み続けるために必要なことなんだと気づいたんです。卒業後は視野を広げようと、5年で戻るつもりで東京の会社に就職しました。結局2年で辞めたけど(笑)

難波

大貴がこっちで起業するって話を聞いたから、俺も「会社を辞めてユーチューバーやる!」ってまずは勢いで(笑)。

伊藤

起業する時に竜次と「10年後の、仲間をつくる。100年後へ、念いをつむぐ。」という理念を決めました。
 ぼくの家の近くに400歳の即身仏さんがいるんですけど、庄内って数百年超えてくるストーリーが結構あって、この地に先輩方がいた気配を感じることも支えになっています。「おもい」も「念」の字を当てていて、死後残るものに自分はロマンや希望を感じているので立てたテーマでした。
 ただ、自分ができる仕事はデジタルマーケティングだから、5年間その業でやってきたけど、主人公を増やすためにはそれでいいのかとは最近よく考えます。正直、なんで地元で活動しているのかと言えば、一番、自分を活かしやすいからかもなって。ぼくらがアクセスできる人脈、歴史、話せること、想い出がある。都会じゃただの20代だけど、ここにいれば話せることがたくさんある。地元は間違いなく好きだし、好きだという話ができるのも得だなって。せっかくある自分の人生資源を使わないのはもったいなくね? みたいな。

難波

ぼくは少し大貴とは違っていて、いろんなものに光を当てて、その光を輝かせたい。なぜ即身仏になったのかは聞けないけど、きっと他者や地域のためだと思う。そう考えていた大人がいたということを皆が知らないままでいるのが嫌で、それこそ裕太の地域への想いとか、それを伝えるための伝え手として俺はいたい。根底は「紹介したい!」っていう想いですね。

佐藤

自分は、ゲストハウスが注目されがちだけど、農業のほうが気持ちが大きくて。農家として大規模経営を目指しているのも、農家の平均年齢が今68歳くらいで、この先団塊の世代が辞めていくと、この庄内平野という超優良農地が廃れてしまう可能性があるから。農業は景観維持にもなるし、水田はダム機能を持ってる。これは守っていかないといけないことだと思うんです。そのためには農業もバージョンアップしていかないといけないから、設備投資もガンガンやっています。これまでは、農地の面積を増やして自分が幸せになることがテーマだったけど、今は自分だけ幸せになっても面白くないと思う。だから、土地生産性を高める努力をして、規模を拡大できるだけの体制を作り、従業員に高い給料を払って、町にお金を落としてもらうような仕組みを作って地域貢献をしていきたいというのが、今の考え。目標は35歳まで(残り5年以内)に庄内地方を中心に100ヘクタールの経営を実現すること。規模拡大に伴い夢を共有できる仲間も増やし、ちゃんと儲かるかっこいい農業を実現し、地域を守っていきます。補助金も貰っているから、生産性を高めて税金を町にたくさん納めることも仕事だと思ってるし。今、法人化も考えていて、会社を作って、同時に人材派遣業もしようと。ゆくゆくは農業生産部門も作る予定です。

伊藤

今の裕太の話を聞いて、満たされているのって大事だなって。自分が潤うから他にシェアできるという流れがあるなと。補助金とか、そういうお金を巡らせる仕組みを30歳になってちゃんと使えるようになってきたな

難波

思い返すと、活動する中で、当たり前に続いていくものが当たり前ではないと気付く瞬間が結構あったなと。だから動画に映したいし、いろんな場所に行きたいんだなというのは、この10年での気づきです。

 

3人にとって庄内とは

佐藤

残していきたい地域。自己満足と言われようが本気で向き合っていきたいし、好きだから残って欲しい場所です。

伊藤

自分が庄内に対して感謝の感覚「もっけだの~」があるし、活かしてもらったと思う。それに、人を活かせる場所だと思うんですよ。ぼくは人の活躍していくさまや能力の開花といった、その人の内側から湧き出すものに触れていたくて、庄内はそれを引き起こし得る場所だと思います。

難波

正直、地元にこだわりはなくて、ぼくは人の根底や想いに触れて紹介できれば、たぶん他の地域だって活動はできると思うんですよ。でも、地元にいると、エネルギーが高まる感じがするんですよね。地元の子ども達とかに「頑張ってね」と言われると、なぜぼくが頑張らなきゃいけないのか、何をやりたかったのかに立ち返れる。ぼくのルーツです。

 

あまるめゲストハウス MOKKEHOUSE

余目駅徒歩5分の素泊まりの宿
〒999-7781
山形県庄内町余目上猿田15?22
TEL 080-9256-3420
https://mokkehouse.business.site/

合同会社dano

ふるさとのココロを
世界へつなぐ
デジタルマーケティング支援事業
Webコンテンツ企画・制作事業
ふるさと発信事業
https://dano.co.jp/

YouTuber アフロりゅうじ

公式YouTube@afroryuji
https://afroryuji.com/

 

 


やまがたの若者向け地域活動情報誌「WA-CHA」vol.4
2023年11月 若者支援コンシェルジュ事務局発行