特集　人とコトがつながる場所　wai wai place 中のや

山形県東村山郡中山町は、山形市に隣接する人口約１万人の町。大動脈とも言える国道１１２号線から東に続く道路沿い、町役場から徒歩１分ほどのところに、旧店舗をリノベーションした「wai wai place 中のや」がオープンしました。
　「人とコトがつながる場所」というフレーズのとおり、「中のや」には複数の人や団体が関わっています。現在は「人をつなぐおもちゃ屋ふわり」、「マルイシ工作室」、元地域おこし協力隊員が開業した「awai design room」の３つが入居しており、それぞれにスペースを活用して思い思いの活動を展開しています。
　「中のや」のオーナーは、中山町役場職員であり、地域活動団体「中山町クリエイティ部」にも所属する村山聡さん。どんな経緯で始まったのかなどをお聴きしました。

空き店舗を自費で購入した理由とは

　村山聡さんは、中山町で生まれ育ち、関西の大学を卒業後、Ｕターンして中山町役場に籍を置きました。町を活性化するための事業として、三大いも煮のイベント実施や、町の農産物を加工した商品の開発などを手掛けてきました。

　「中のや」を作るきっかけになったのは、町で活動していた地域おこし協力隊員でした。

「協力隊の任期が終わってからも、中山町に住んで活動したいと言ってくれたんです。スカウトした私としては、その気持ちが嬉しくて手伝おうと、それにふさわしい住居兼事務所がないかと探していました。すると、昔お菓子屋さんだった『旧中野屋』を見つけたんです。私も子どもの頃はお菓子を買いに来た思い出があります。厨房や蔵もあり、いろいろ使えそうだと思って、家族に頭を下げて旧中野屋を買いました。もちろん家賃収入でそのうちペイできるという試算もありますが、許してくれた家族には感謝しかないです。」

　購入してから取り組んだのがリノベーションでしたが、思いの外はかどらず、苦戦を強いられたそうです。
　「知人の息子さんが大工をしていて、強力な助っ人になってくれるなど、いろいろな人が手を貸してくれてオープンまでたどり着きました。」

人の往来を生む活動拠点！場所があるから活動できる、可能性が広がる

　当初は任期を終える地域おこし協力隊員のために、と購入した店舗でしたが、話を聞いて「入居したい」という人が次々と現れます。
　はじめは、「マルイシ工作室」さん。裏にある小屋を作業場に、そして活動の場としても使いたいと入居することになりました。そして、もともと中山町内の自宅で開業していた「人をつなぐおもちゃ屋ふわり」さんも、常設の店舗が欲しいということで、おもての店舗の半分を使うことになりました。

「入居者も決まったし、それじゃあオープニングイベントやりますか、看板つけますか、って感じで（笑）。外装工事が終わってなくて足場がある状況でしたが、そんな感じで始まりました。」

　オープン後も、いろいろな人から「ここで何かできそう」という相談がきているそうです。
「ここを足掛かりに活動を始めたいという人から相談が来るようになりました。相談を受けて、力になれなくても、中山町の中にはいろんな人がいるので『あの人に相談してみたら』とつないだりしています。ここで何ができるかな、と妄想してくれるのが楽しいですね。
　いろんな人がここでやりたいことを話し合って、自分が思いつかないようなことをするんですよね。ふわりさんも、オープニングイベントでおもてのガラス窓に絵を描かせたりとか、マルイシ工作室さんは子どもたちを読んでワークショップしたりとか。好きなようにやってもらっていて、それがまた刺激的でおもしろいです。やりたいと言うことには基本反対しないで、周りとの調整とか、壁になることを取り払う役をしていますね。」

　「自分が子どもの頃と比べて活気がなくなった街並みをどうにか元気にしたい」という思いがずっとある、という村山さん。「中のや」ができたことで、新たな人の往来が生まれました。

　「wai wai place 中のや」は、あらかじめ決められた線路（計画）というものがなく、みんなで線路を足していきながら進む列車のよう、と笑います。

　「中のやは、いろんな人が関わる『余地』があるなと思います。すでに線路が決まっていると、そこに乗れる人だけが乗る、となってしまう。自由に線路を継ぎ足す私たちを受け止めてくれる村山さんだから、今こうなっているんだと思います。」
と話すのは、「人をつなぐおもちゃ屋ふわり」さん。

　ゆるくやさしい空間の中で、これから何が始まるのか？
　中山町の一角で、まだまだ楽しいことが続きそうです。