山形の若者の活躍や山形の魅力を発信する「やまがた若者応援大使」が、県内でチャレンジする若者に会いに行く『やまがた若者応援大使の“やまがた探訪Ⅱ”』。

今回は「SHARE HOUSE MYA (合同会社とびしま)の渡部陽子さん」が、鶴岡市の旧朝日村地区を訪ねました。

#てぼこ 五十嵐由紀子さん
【探訪者 渡部陽子さん】

鶴岡市の旧朝日村地区で自然や地域に寄り添った活動をする「てぼこ」五十嵐由紀子さん

鶴岡市の旧朝日村地区に住みながら、「てぼこ(※)」という愛くるしい屋号でいろいろな作品を生み出している、五十嵐由紀子さんにインタビューしてきました!
※てぼこ:山形弁で「不器用」という意味。「不器用だけど地域を知って精進しながらモノづくりをしていきます」という想いを込めて屋号としているそうです。

ー今日はどうぞよろしくお願いします!由紀子さんが山形に移住するきっかけについて教えてください。

私はもともと旅行が好きで、国内あちこち1人で出かけていました。旅行先の北海道で、山形県の方と知り合ったのが、私と山形の最初の出会いです。その頃の私は関東で忙しく働いており、仕事に関する勉強をしたり、必要なことを身につけたりして、自分なりに知識や経験を積み上げていました。でも、訪れた山形では、私が積み上げてきたこととは全く違う、自分の知らないことを知っている人がたくさんいて、そんな人たちと出会ったり、新しいことを知ることが面白く、山形に惹きつけられていきました。

「それってどうしてですか?」「体験しに伺ってもいいですか?」と知り合った方に声をかけて、訪問して、また人の輪が広がって。それが楽しくて何度も遊びに通っていました。
そして、最初は山形市に移住して、結婚を機に朝日村に住み始めました。

ーてぼこの作品づくりはどんなふうに始まった活動ですか。

夫は、金三郎十八代目という屋号で庄内柿を主力に、天然の山菜を採ったり、平飼い養鶏などできるだけ自然によりそう形で農業をしています。結婚した頃は、夫が就農したばかりの頃で、勢力的にマルシェに出店していました。夫は、ハウス栽培はせず「旬」にこだわった農業を営んでいるので、年間を通じて安定した収量で販売できるものがなく、試行錯誤していました。 また、県内では周りに農家さんがいる環境があって普段から美味しいものを食べている人が多いので、夫の販売する農作物は、値段で比べられてしまうことが多いことが課題でした。

そんな時に、マルシェのお客さんと話すきっかけになるような目をひくポップがあれば良いな、と思って版画を彫り始めました。

版画で作った「庄内あるあるシリーズ」のマッチ箱

それまで版画を彫ったことはなかったのですが、試しに作ってみたら、夫も「いいねー!」って褒めてくれて。朝日村の風景や夫が出品する農作物の素朴なイメージ、こだわりのある表現が版画でできるのではないかと思ったんです。

新庄のkitokitoマルシェでは、月ごとに出品するものを版画にしてポップにして持っていくと、一度気になって声をかけてくださったお客様が翌月も顔を出してくださったり。そんなお客様との会話の中から、「版画は売っていないの?」とお問い合わせいただいたり、「どんなグッズがあったら欲しいですか?」と逆に聞いてみたりして、少しずつ「てぼこ」としてのグッズが生まれていったという感じですね。

ー作品を作っていく中で、大切にしていることはどんなことですか。

私は、少しゆるいものが好みで、あまり写実的なデザインにしないようにしています。どんなものを作ろうとか範囲は定めていなくて、あくまで自分の心に響くものを作っています。自分が気に入って面白いと思って作ったものや目をつけたことが、作品にふれていただくことで、庄内を知るきっかけとなり、面白いと思ってくれるといいな、と思っています。万人に受けなくてもいいので、刺さる人に刺さってほしいです。 また、草木ものを作るときは、材料は買わず、朝日村にあるものだけを使って作っています。山の素材と自分の感性だけで作る、その作り方がてぼこらしいリースを生み出すこだわりです。

朝日村の山の素材でつくるリース

ー山形の人って、控えめで素朴で、でも地元が好きという人が多いように感じるんです。「てぼこ」の作品は、そんな山形を表していて、上手に発信しているんじゃないかなと思うんです。

私が帰省した時とか、友達に「山形での暮らしはどう?」と聞かれた時に、「こんなことあってね」と暮らしの中の何気ない話をしているのに面白がってくれたことがあって。嬉しかったですね。山形の人は、「山形には何もないよ」って良く言いますけど、「皆さんが気付いてないだけですよー!」って言いたいです(笑)

地域にあって当たり前だけど、みんなが目を向けていないものを取り上げて、形にして、地元の人にも、地元の面白さに気づいてほしいと思います。

ー朝日村での生活について教えてください!
山形に来てみて新鮮だったこととか、驚いたこととかありますか?

びっくりすることがたくさんあって何から話したら良いかわからないです(笑)

笹巻き作りを1つ例にして話します。 笹巻きを作るのは、餅米を笹で巻く作業やアク水を入れて煮る工程は、分量も時間も長年の経験でレシピはありません。笹を準備することから考えると、笹巻きを作る1年前から大きさも形も丁度良い笹を採っておき、下処理して保存しておくんです。さらに、うちで使う笹の葉がある場所は、夏になるとスズメバチが巣を作っていたり、クマを捕獲するためのワナが仕掛けられていたりして、笹の葉を採りにいくだけなのにアドベンチャーみたいになるんです。スズメバチやクマが出てきやしないかと。大げさに言えば命懸けで採った笹の葉なのに、食べたら一瞬でなくなってしまう。この一瞬のために1年かけて気の遠くなるような手間暇をかけて作っている。当たり前じゃないことを、当たり前に暮らしの中でしていることが、本当にすごいと思うんです。

手間暇かけて作られる笹巻

また、県内でも朝日村は豪雪地帯で有名ですよね。県外から来て車の運転に慣れていない私でも、毎日往復30㎞運転しているのですが、雪道の運転はいまだに慣れません。常に歯を食いしばって運転しているようで、運転し終わると顎が痛くなるほど。職場に着いても自宅に着いてもどっと疲れが出ます。

朝日村の雪景色

朝日村は、降雪量は多いですが、除雪の時に雪を道路の両サイドの畑に飛ばすので道路の広さは確保され、きれいに除雪されているので運転しやすいです。朝日村の道路はほっとします。

話は変わりますが、てぼこの作品の中に、「里山の獣害シリーズ」というのがありまして、、、

ー獣害シリーズ!?

はい(笑)

私が朝日村に嫁いだ年に、自宅にクマが入ったことがありました。私はその場にはいなかったのですが、網戸は破れるし、ガラスは割れるし、何もいいことなかったんです。実家の母には「猿は出ると聞いていたけど、クマが出る所に嫁がせた覚えはない」って言われたことを今でも覚えています(笑)

クマの他にも、猿、猪、ハクビシンなどによる農作物への被害が出たり、山の近くで生活している人は困っているのだと、獣害の話にリアリティーを感じたのも朝日村に嫁いでからです。 ネガティブなことをネガティブな状態で街の人に伝えても「大変ですね」としか言えないしリアリティーがない。獣害被害のことを意識していない人にも実生活での獣害の話を知ってほしいと思って、作品にしました。 地域で抱える人口減少や高齢化、大雪による被害など、住んでいる人にとっては大きな問題ですが、それは同時に資源でもあって、捉え方一つで見え方が変わってくるんです。自分が関わっていることで興味深く見てもらえたら良い、移住者という無責任な立場だから考えることですよね。

ー無責任じゃないと思います。住んでるんだから、もうその土地の人で、十分責任も感じて暮らしていると思いますよ。由紀子さんだからこそ出たアイディアだと思います!素敵です!
今後チャレンジしたいことなどはありますか?

最大の野望は、「てぼことりっぷ」を作ることです。庄内の魅力を、私の目線でまとめたものを作りたいです。観光名所をまとめたようなよくある冊子ではなくて、万人に受けはしなくとも、ここで暮らす私が「面白い!」と心惹かれるところをまとめた、そんな庄内のおもしろ冊子を作りたいです。

ー由紀子さん、今日は本当にありがとうございました!

ーー地域の中で暮らしながら、当たり前に地域にあることでも自分が面白いと思った感性を大切にしながら作品づくりをしている姿がとても印象的でした。由紀子さんが作り出す、素朴でやさしく、つい微笑んでしまうようなおもしろい作品たちが私は大好きです。