山形県内各地域で活動されている「地域おこし協力隊」。
地域おこし協力隊には任期があり、一般的に3年程度で任期満了を迎えます。とくに3月は任期満了となって新たな道へ進む隊員さんが多い時期です。
大石田町では、この3月に、3名の協力隊さんが任期満了を迎えるということで、お話しを伺ってきました!
実は、任期満了を迎える3名の地域おこし協力隊さんは、3年前の着任時に取材をして、意気込みなどを聞いていました。
ぜひこちらも合わせてご覧ください。
▼着任時の取材記事 2021年6月
令和5年度の大石田町地域おこし協力隊は6名(R6.2月着任者含む)。ミッションは、大石田駅前の『にぎわい拠点施設KOE no KURA(こえのくら)』を活性化する事業や、インバウンド推進、空き家対策、ダンスによる町のPRなど、さまざまです。
特に、KOE no KURAではさまざまなイベントを展開し、「大石田町っておもしろそう」と思ってもらうためのきっかけをつくってきました。
▼過去のイベントでは、マルシェやサブカル関連イベント、クラフトイベントなど、幅広いジャンルのイベントを開催
また、2021年からは、大石田町にアーティストを招いて交流をする取り組み「大石田AIR(アーティスト・イン・レジデンス)」も始まりました。
▼過去のイベント
今回任期満了となるのは、KOE no KURAの運営を担当していた久龍花怜(かれん)さんと土田徹奈(ゆきな)さん、そしてインバウンド観光の促進を担当していた末石靖知(やすとも)さんです。
3名に、3年間活動してみての感想などをインタビューしました。
3年間、すごく楽しかったです。大石田町という、申し訳ないけど聞いたことがなかった町に来て緊張していた私を、すんなりと受け入れてくれた町民の方々には本当に感謝しています。
活動自体も楽しくできました。とはいえ、インバウンドという分野は、興味のある町民の方も限られるので、関わることのなかった方もいらっしゃって、そういう方には何をしているか分からない人になっていたんじゃないかなという気もします。
ただ、大石田駅から銀山温泉に外国人観光客をお連れする過程で、駅前に待合所を作ったり、大石田町のおすすめ飲食店を発信したりと、大石田町自体に興味を持ってもらう取り組みはできたかなと思います。交通の面でも、バス会社とタクシー会社で協力していける体制づくりも行うことができました。難しい面もありましたが、インバウンドで訪れる観光客の皆さんのために一丸となれたことは、ありがたいし良かったなと思います。
協力隊として大石田町に移住したことによって、いろんな方が声をかけて、気にかけて、面倒をみてくれました。きっと、ただこの町に移住しただけでは、誰とも関わることなく淡々と暮らしていたと思います。協力隊という制度を使ったからこその、人との繋がりや関わり方がありました。人との繋がりが、私にとって一番心強い力であり、強い味方でしたね。
前回(2021年)取材してもらった時に、「KOE no KURAをどんな場所にしたいか」と聞かれて、私は「夢を叶えられる場所にしたい」と答えました。このことばが自分の中にずっとありました。夢を叶えられる場所にするべくイベントを打ち出しましたが、なかなか思ったようにならず、イベント屋さんになってしまった時期もあります。ですが、3年目になって、「この場所だったらできるんじゃないか」とスペースレンタルに来てくれる方が現れ始めて、思い描いたものになってきた喜びを感じることができました。
サブカルイベントでは、町内のイラストを描く方や、遠方から出店のために来てくれた方もいて、今までになかった関わりを作ることができました。私も楽しかったですし、嬉しかったです。
以前までは、冬の間のバスの待ち時間は、外で震えていたんです。そこで、待合所を作って暖かくして、他にも快適に過ごせるような機能を多くしていきました。SNS発信の面でも、東北旅行好きの台湾人が集まるコミュニティで、バスの待ち方や大石田町の飲食店など現地での細かい情報を発信していきました。それを見て実際に旅行に来た方から「あなたがいて本当によかったわ」と言われたのが、嬉しかったですね。ちょっとでも外国人の方に大石田町の良い印象を与えられたかなと。基本的に大石田駅に来る外国人観光客は銀山温泉が目当てなので、大石田町を目的にはしていないんです。それでも、「ここにあなたがいてくれてよかった」と言ってくれたのは、この活動をしていて良かったなと思えました。
「こういう場所があって良かった」と言ってもらえると、やっぱり嬉しいし、やっていて良かったと思いますね。KOE no KURAは蔵を改装した小規模な施設のため、大人数の集客ができません。だから、他の大きなマルシェイベントにも出ているような作家さんに出店してもらうと、なんとなく申し訳なさを感じていたんです。でも、そうじゃなくて、「このアットホームな空間が、お客さんとの距離が近くてむしろ良い」と言ってくれた方がいて、逆転の発想というか、そう考えて良かったんだなと気づかせてもらいました。
一時期、毎週のようにイベントをしていたことがあって、その時は企画して、チラシを作って、お声がけして、場所の準備をして……と、もうすごく忙しくて大変でした。イベントをたくさんしていると次のイベントに対する期待も生まれてきて、嬉しい気持ちもあり、イベント屋さんになっちゃっているなという感覚もあり。イベント自体は楽しいですし、終われば達成感もありました。この時期があったことによって、KOE no KURAの認知度も上がったんじゃないかなという手ごたえもあります。
もともと住んでいた兵庫県西宮市と、ここ大石田町の2か所に拠点を置き、行き来する2拠点生活をする予定です。私のやってきたインバウンド推進活動は、町民の方でも関わりがない方には「何をやっているか分からない」という印象を持たれていたのではないか、もっと繋がりを広げられたのではないかという後悔があります。それらを解消できるよう、これからも大石田町で、インバウンド推進活動を続けていきたいと思います。
子どもと関わる仕事がしたいと思い、保育関係で働くことを決めました。
というのも、活動の中で、子ども達に授業をする機会をいただいたことがあり、授業では、協力隊の活動や移住についての話をしました。子どもたちは協力隊の活動に興味を持ってくれましたし、協力隊になりたいと言ってくれた子もいます。その中で、自分が話したことが子どもたちに影響を与えるという瞬間がいくつもあり、子どもと関わる仕事がしたいと思うようになりました。この一年で必要な資格などを取得し、春からは天童市の保育園に勤める予定です。これからは子ども達と、それから親御さんの力になれるよう、経験を積んでいきたいと思います。
今後は、活動の中で培ってきた人脈を生かしながら、「人の紹介で仕事をする」ということにチャレンジしてみたいと思っています。いろんなところでいろんなことを体験したいです。
私は、協力隊になる前は、あまり人と関わらずに生きてきました。だから、大石田町に来て、こんなに協力してくれる人がいるんだなというのを感じました。人に出会って、またその人から紹介されて、応援されて、時にはちょっと甘えてみたり……という、繋がりから広がっていった感覚があるので、繋がりで生活するというのを、数年やってみたいと思います。
3年前に取材をしたときに、みなさんの目標を聞いていました。
土田さんは「人とかかわりを作ること」、久龍さんは「夢を叶えられる場所にすること」、末石さんは「観光客を呼び込むこと」。
みなさんそれぞれ、掲げた目標を叶えていて、笑顔でお話しされているのがとても印象的でした。
取材中も、末石さんが香港滞在中に購入した20年もの(!)のプーアール茶を入れて下さり、リラックスする香りに包まれながら、和気あいあいとお話しさせていただきました。本場の中国茶は円盤のように固められた茶葉を削り出すのだそうです。
大石田町地域おこし協力隊は、現在活動中の3名に加え、5月に新たな隊員が入る予定だそうです。
携わる人が変わることで景色を柔軟に変えていくKOE no KURAは、今後どんな施設になっていくのでしょうか。
3人の今後と、これからの大石田町に引き続き注目です!
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