大石田町が運営するコミュニティスペース「KOE no KURA」は、平成29年の8月に100年以上前からある蔵を改修してオープンしました。
名前の由来は、「声と声の出会い」
町のコミュニティの中心として、町内外の人を結びつけて、交流の生まれる場所にしようという思いが込められています。

その大きなコンセプトを背負って運営するのは、大石田町地域おこし協力隊の皆さんです。今年度(令和3年度)に新しく3名が加わったという情報を耳にして、お話を聞いてきました。

 

 

KOE no KURA観光物産情報の発信・移住相談窓口としての役割も担っています。また、コーヒーの飲める休憩スペースもあり、蔵特有の開放感のある空間でゆったりと相談をする事が出来ます。

こうした人と人との関係を作る、関係案内所としての面もあるKOE no KURAでは、実際に人と人が集まれる、繋がれるような取り組みも行っています。

 

イベントでつながる スペースレンタル

KOE no KURAの建物内、駐車場を貸し出すスペースレンタルでは、ワークショップや展示など、様々な用途で使用することができます。
昨年は農作物の無人販売をしたり、DJイベントをしたりしたこともあったそうです。新型コロナウイルス対策に留意して、今年も貸し出しを受け付けています。

523日(日)には子供服の交換会も催されました。

大野あかねさん

子供服の交換会は、地域おこし協力隊の大野あかねさんが主体となり、シーズンごと(年4回程度)の開催を予定しているそうです。 

作品でつながる レンタルBOX KOE no HAKO

KOE no HAKOは建物の中にある正方形のBOXスペースをまるっとひとつ借りることができるサービスです。
趣味で作っている小物や、マルシェなどで販売している雑貨類をKOE no HAKOに展示して、販売することができます。
※月額500円、最大3か月間

 

コロナ禍で始まった作家さん手作りのマスク販売は、施設が休館した際も町役場で販売が続けられ、人気商品になっています。

 

 

「小物を作る作家さんが作品を世に出す最初の一歩になれば」という願いを込めて始まったKOE no HAKOは、既に登録者が60名を超え、常に20近いBOXが埋まるまでになっています。北は北海道、南は長井市までの作家さんの作品を見ることができる、貴重な場所です。加えて、販売する際には、地域おこし協力隊の皆さんが作家さんから聞いた作品への思いも、一緒に伺うことができます。3か月ごとに作家さんの入れ替えもあり、そのたびに足を運んでくれるリピーターもいるそうです。

大野達也さん

 地域おこし協力隊の大野達也さんは、 「KOE no KURAにはいろんなファンの方がいてくれます。KOE no KURAのファンの方、スペースレンタルで借りてくれるファンの方、KOE no HAKOの作家さんのファンの方、それから、KOE no HAKOのファンの方。いろんな見方の違うファンがいるので、その方たち同士が繋がって、そこからイベントになることもあります。ファンの方達同士で盛り上げてくれるので、嬉しいです」と話します。

 

 KOE no HAKOを利用している方には、月に2回(8時間分)のレンタルスペースを無料で使えるメリットも。作者さんが開いたイベントで、そのファン同士が交流しあい、KOE no HAKOの利用者となってくれるなど、クラフト好きな方の輪が広がるきっかけとなっています。

 

➡レンタルスペース、KOE no HAKOの詳細は公式HP

  

 KOE no KURAの運営は、2019年に卒業した初代大石田町地域おこし協力隊のあと、大野達也さんと大野あかねさんが引継ぎ、お二人が今年度で卒業することを機に、新しい隊員の方達に引き継がれます。3名の新規隊員のうち2名が7月からKOE no KURAを拠点として活動する予定だそうです。

 

簡単ですがご紹介と合わせて、地域おこし協力隊の皆さんにとってKOE no KURAはどういう場所なのか、お伺いしました。

大野達也さん (写真左上)

神奈川県出身の大野さんは今年で3年目、最後の年にあたります。Youtuber「たつたいtatsutai」さんとして、大石田町の魅力を動画で発信しています。

「私にとってKOE no KURA情報収集の場所ですね。ここにいると、観光客や町内の方が来てくれます。そうして、地域おこし協力隊を気にかけて下さってる方や、町の事を気にかけてくれる方とおしゃべりをする事で、大石田町のYoutuberとして活動するための情報収集をさせてもらっています。動画の内容はほとんど町民の方からの情報です。町外出身者からしたら信じられないようなこともありますね(笑)」

 

大野あかねさん (写真左下)

山形市出身の大野あかねさんは、大野達也さんと一緒にご夫婦で地域おこし協力隊となりました。「大石田町のにぎりママ」として、SNSを中心に子育て中のお母さんの目線で町の魅力を発信しています。

「ここに来るお客さんは山形出身の私でも知らない山形の事を知っているので、たくさん情報をもらっています。子供服の交換会も、大石田町に嫁いできて友達のいないママさんたちのために、交換会を通してママ友をつくったり、子育ての悩みを共有したりすることを目的に開催しました。そういうママさん同士の繋がりを生むことができる場所でもあります」

 

土田徹奈(ゆきな)さん (写真右下)

新庄市出身の土田さんは、最年少の21歳。ご自分の得意分野である絵を描いたりデザインしたりということを活かして、人とかかわりを作っていきたいと思い大石田町の地域おこし協力隊になりました。

「私がKOE no KURAでしたいと思っていることは、町民の皆さんの声を企画などに反映させることです。ここにいることで、人脈を広げて、人とのつながりも広がっていけたらと思います。町民の方の中には、お孫さんみたいに接してくれて、気にかけて下さる方もいます。山形県内ではあっても、よそから移住してきた私を受け入れてくれて、とても嬉しいです」

 

久龍花怜(かれん)さん (写真中央)

大阪府から移住してきた久龍さんは、KOE no KURAの「声と声の出会い」というフレーズに惹かれて大石田町の地域おこし協力隊となりました。

「ここだったら、町内外の方と関われるし、私が入って町内外の人を結びつけることができるかもしれない。私の思い描いていた理想に一番近いのが大石田町のKOE no KURAでした。

私はここを、『夢を叶えられる場所』にしていきたいと思っています。例えば、家族の中で共有して終わっていた自分の作品が広くデビューするKOE no HAKOや、やりたいイベントを開催することができるスペースレンタルです。この場所が、訪れた人にとって何かのきっかけになって、夢を叶えてくれたらなと思います。皆に夢を叶えてもらえたら、夢を叶えてほしいという私の夢もかなうんです」

 

末石靖知(やすとも)さん (写真右上)

末石さんは10年以上フリーランスで観光業に携わってきました。その中で、観光での地域おこしに興味を持ち、大石田町の協力隊に応募しました。

「私の拠点は役場ですが、大石田駅からほど近いところにあるKOE no KURAを観光の拠点として、町に観光客を呼び込むような活動をしていきたいと思います。ですから、私はKOE no KURAの運営ではなく、この場所で何かしらのイベントを仕掛ける側です」

 

末石さんは、5月30日に中国茶と着物を楽しむイベントを開催されました。

「大石田中国茶&着物Day」は、二種類の中国茶を、着物をきた末石さんがふるまうイベントで、今後は毎月最終日曜日に開催する予定だそうです。
参加費は無料で、町内外の方どなたでも楽しむことができます。

 

「普段着の着物を提唱していきたい」と話す末石さんは、取材当日も米沢紬の上品な着物姿でした。イベント当日は洋服と着物を合わせた、着やすい着物スタイルでもてなしてくださいます。

 

最後に、これからのKOE no KURAについて、久龍さんに伺いました。

「大石田町は“何もない町”“小さい町”だという声もありますが、そういうところでできることはいっぱいあります。都会でしているいろんなことは、別に都会じゃないとできないわけじゃありません。そういうことを、この地元でも楽しんでもらえるように、どんどん作っていきたいと思います。

7月から、KOE no KURA20代の二人で運営します。町内外の若い方も、世代の近い人が運営していたら足を運びやすくなるかな、という期待もあります。

観光客の方に大石田町を知ってもらうのはもちろんですが、それだけじゃなくて、大石田町の人に、大石田町を楽しんでもらえるようなことをしていきたいです」

 

レトロな雰囲気ただよう蔵の中に若者の声が溢れる日が、待ち遠しいなと思う時間でした。
これからの皆さんの活躍が楽しみです!