山形の若者の活躍や山形の魅力を発信する「やまがた若者応援大使」が、県内でチャレンジする若者に会いに行く『やまがた若者応援大使の“やまがた探訪Ⅲ”』。

 今回は、「くしびきこしゃってプロジェクト代表の宮城妙さん」が、鶴岡市でKickin' Dance Famを主宰している菊地将晃さんにインタビューしてくださいました。

#Kickin’ Dance Fam 主宰 菊地将晃さん編
【探訪者 宮城妙さん】

 障がいの有無に関わらず、ダンスを通じて自己表現する場を10年にわたってつくり続けているKickin' Dance Fam。週1回の練習を重ね、イベント等に参加してパフォーマンスを行うことで、人と人との交流を図っているストリートダンスグループです。…私もKickin' Dance Famのパフォーマンスに心動かされた一人。10年間のこれまでと、これからのことを、主宰の菊地将晃さんにうかがいました!(以下、敬意を込めて、キックさんと呼ばせていただきます。)

Kickin' Dance Famのステージパフォーマンス。後列中央がキックさん。

ー2014年チーム結成とのことで、10周年おめでとうございます!
Kickin' Dance Famは、どんなチームですか? 結成のきっかけも教えてください!
 Kickin' Dance Famの「Fam」は(ファミリー)という意味で、"血がつながっていなくてもダンスでつながっているもう一つの家族''という想いがこめられています。メンバーは、ダウン症、知的障がい、発達障がい、といわれるメンバーだけでなく、高校生、大学生、社会人など様々で、基本だれが来てもOKです。

 結成のきっかけは10年前。鶴岡市内で仲間と活動していたストリートダンスグループの練習場所に当時、勤めていた障がい者通所施設の利用者だったダウン症の男性が練習しに来ていたのですが、一緒にお祭りなどでパフォーマンスをするようになって、メンバーに子どもたちが増えてきたタイミングでチームを作りました。お父さんお母さんとのコミュニケーションもとりながら、ただの集まりの範疇ではなくて表現の場として維持していこうという気持ちで始めました。「Fam(ファミリー)」には、踊る本人もですがお父さんお母さんも輪の中に入っているイメージです。

ーまさにファミリーですね。活動を続けてみて、メンバーの変化やお父さんお母さんの気持ちの変化はありましたか?
 「外出する機会が増えたのが嬉しい」「みんなと出逢えて、楽しそうに笑っていることが増えて、子どもが何事にも少し積極的になれた」というメッセージももらっています。お父さんお母さんの変化も感じますね。子どもたちの笑顔が増えて、ダンスで拍手をもらったり、キラキラした表情で踊っているのを見ていくうちに、はじめはお母さんたちに少し悩んでいるような雰囲気があったりしたものが柔らかくなってきたような、親として抱えていたものが少しずつ軽くなってきたような感じがしています。みんながみんなお互い様だし肩組んで生きていくのを体現しているチームになっていったらいいし、人間はそもそもそういうものだよな、と思います。僕自身も、はじめはダンスを教えることに必死になっていただけだったけれど、ダンスを磨くだけでなく"居場所"としての要素が強くなっていく感覚があって、僕にとってもゆるやかだけどダンスでつながっている家族のような感覚になってきています。

ーなるほど~キックさんにとっても変化があったのですね。
そうですね!

週一回の練習風景。

ーところで、キックさんは3年間くらい鶴岡を離れていた時期もあったと思うんですが、その間はどのように活動をしていたんですか?
 当初からのダンス仲間で僕と一緒に教えてくれているメンバーもいて、お父さんお母さんの続けたいという意思もあって、活動は続けていたんですよ。沖縄・神奈川・石川を放浪していたんですが、月1回くらいは帰ってくるようにしていました。

 僕は、今でこそダンススタジオのインストラクターとしても仕事をしていますが、当時は単にダンスに打ち込むひとりの人間だった。障がいを持つ方との関わりに特化しているわけでもない。このチームが有名になっていくのがいいのか、もっと場を増やしていくのがいいのか、悩んでいたタイミングでもあって…

ーでも、3年後鶴岡に戻ってきてくれた!
 メンバーやその家族の皆さんがこのチームを大事に思っていてくれたことで、Kickin' Dance Famを続けていこうと意思が固まったのが大きかったですね。障がいのある人だけでなく、健常者と呼ばれる人も一緒になって「Yeah!」とできるって実はすごいことだなって、3年間で気付かされました。僕自身がKickin' Dance Famの存在に救われていたし、みんなが大好きという大きな理由もあって。同じ頃、現在インストラクターとして働いているダンススタジオ立ち上げの話があって、「キックが鶴岡に戻るなら鶴岡にスタジオ立てようと思っているんだけど」とオーナーに声をかけていただいて、今に至ります。

 ヒップホップカルチャーで、複数のダンサーが円になって即興で踊っていくサイファーというのがあるんですが、多くの人は怖いんです。Kickin'メンバーも、躊躇するメンバーもいるけど、最終的には「エイッ」と出ちゃう。エイっとさせる雰囲気のあるメンバーということもあるんですが、ハートが体を動かすような、これは彼らの才能だと思っています。うまく踊れたから "Yeah!"なんじゃなくて、ここに存在していることがすでに"Yeah!"なんですよね。

 長くやっていると、彼らがいてパフォーマンスする全てが、この世において価値があるというか、大事だなと感じることが多くなってきた。だからこそ、いろんなところに連れ出して、見てもらう機会を増やしていこうと思っています。

ーここに存在していることが"Yeah!"って本当に大きな学びです。
見てもらう機会についてお聞きしたいのですが、鶴岡だと「山大農場フェス」や「おとアート@荘銀タクト」など見させてもらいましたが、とっっってもよかった。山形市や県外での活動もされてますよね。印象に残っていることはありますか?
 県外のイベントだと、関東の「チョイワルナイト」に毎年呼んでもらっています。昨年はコロナ禍以降、制限なしでの初開催で川崎市で開催されました。

 

「チョイワルナイト2023@川崎市」

 あと、これは個人的な活動ですが、「山形ビエンナーレ2022」で実施された市民参加型ダンスワークショップ「さわる/ふれる~ここにいない人と踊るエチュード」にKickin'メンバーの2人とともに参加しました。2人には特性があってリズムダンスでは彼らの表現が発揮できていないかもと感じていて、輝く場を与えられていない葛藤があったんです。コンテンポラリーダンスは僕の主戦場でないので自分自身の挑戦でもあって。音楽がなくてもダンスとして成立する場を2人と味わってみたくて、家族の了承を得てダンスワークショップに参加するため山形市まで連れ出しました。結果、それが大正解で。最高でしたね。お母さんたちも喜んでいました。

ーパフォーマンスの場や、関わり方はどんどん広がっていますね~(ワクワク)。
 やっぱり彼らにしか出せない表現というものがあるんですよね。最近ではダンスワークショップの依頼を受けて、メンバーにアシスタントや講師としてダンスの仕事という形で関わってもらうということもできてきました。「踊ることで、誰かを喜ばせたり笑顔にさせることができる君たちは、すごく活躍しているんだよ」ということを、彼らに実感してもらう。そんな関わり方は今後もっとできたらいいなと思っています。

ー最後に、これからのKickin' Dance Famについて聞かせてください!
 ここまで来たので続けていきたいですね!でもたまにふと、「これって当たり前のことをやっているだけなんだよな…」と思うことはあるんです。僕自身「誰でもどうぞ」と言いつつ社交的でもないのですが、これからはチームやメンバーがダンスというものを大事にしながら、もっと多面的に社会と関われるようなチームでありたいと願っています。1つの「新しい文化」~表現の形という意味合いでの~の形成における核になるメンバーになっていってほしいなと思っています。それを担えるように、続けていきたいですね!

ーKickin' Dance Fam の他にもTOALLとして表現の場づくりもされているキックさん。
「余暇に好きなことを選べて、やれて、活動を通して仲間ができる。」そんな場がTOALLだそうですが、それらは人権の活動でもあると言います。「これは障がいがあるから仕方ないよね、とならなくていいやつだ」と思ったことには、まっすぐな思いを楽しそうなアウトプットにのせて、葛藤しながらもみんなで"Yeah!"とやっちゃう。彼の周りには「何かあったらいつでも手伝うよ!」という人が集まっている気がします。

キックさんの言葉を借りれば「みんながみんなお互い様だし人は1人では生きられない。肩組んで生きていくチームに、地域社会全体がなっていければいいな。」そう強く思ったインタビューでした。

菊地将晃(Kickin' Dance Fam /TOALL主宰) プロフィール
福祉活動家/ダンサー。 北海道出身。山形大学農学部卒業後、畑ちがいの福祉の道へ。ダンスも福祉であることに気づき、2014年からKickin' Dance Famを結成。2019年からは表現の場づくりTOALLの活動も行っている。
Instagram https://www.instagram.com/kickindancefam