4年前、鮭川村に家族で移住し、絵本作家やイラストレーターとして活躍されているラーワーちひろさん。
その絵は、おしゃれで可愛らしいけどどことなく懐かしくて温かいと人気です。
その人となりと絵の魅力を探るべく、事務局の庄司が取材にお伺いしました!
「こんにちは」
笑顔でドアを開けてくれたラーワーちひろさんは、ショートカットが似合うとてもキュートな方でした。
ラーワーちひろさんは、群馬県出身。保育士としての就業をを経て、結婚後に山形県鮭川村に家族で移住してきました。
現在、夫と2人の男の子の4人家族。
独学で絵を習得し絵本製作、イラストレーター、イベントで似顔絵やライブペイントなどを行っています。
絵本の魅力
まず読ませて頂いた絵本が『サンタさんなんてだいきらい』。
最初に絵を拝見した時は、なんて素敵なんだろうと一瞬でトリコに。
温かみがあっておしゃれで素晴らしい色遣いです。
主人公モモは、先生の「良い子じゃないとサンタさんは来てくれませんよ」という言葉に、傷つき不安になり…というストーリーです。
「自分の子どもの頃に重ねてしまいました」と共感したことを話すと、
「私も親からそんなふうに育てられたという下地はあって、ずっと反骨精神が強かったんです。みんながこうじゃなきゃということに疑問を持ったり簡単には納得しなかったり。
だけど子どもが生まれたら、自分が言われたりされたりして嫌だったことをついしてしまう。それじゃダメだと思いながらもやはり“良い子”でいてくれるのは大人にとって都合がいいのかなと。
でもそうじゃない方がいい、子どもに寄り添いたいという気持ちは強いです。
大丈夫だよ、みんな愛されるべき子だよ、ということを伝えたいですね。」
とちひろさん。
あとがきには
「でも本当は『子どもに良い子も悪い子もない』とこの絵本を通してわたしは伝えたかったのです。」
とありました。
大人の尺度で子どもを評価したり決めつけたりするのではなく、どんな子でもそのまま、ありのままを周りの大人たちが受け入れて愛してくれればいいなと思わせてくれる。この絵本は大人にこそ読んでもらいたいと感じました。
ラーワーちひろさんの絵本は、他にイヤイヤ期のご長男をモデルにした『モンスターほいくえん』があります。クラウドファンディングで国内外のたくさんの方に応援してもらって完成しました。
2冊とも夫のフレデリックさんの英訳付き。ネットショップや山辺町の「ベル」で購入可能。
どちらもネット印刷して、なんとご自分で製本しています。製本の様子はラーワーちひろさんのインスタグラムでどうぞ
ママチャリ旅での出会い
群馬県出身のラーワーちひろさんは、地元で専門の学校を卒業後、保育士になりました。
23歳の時に「今しか出来ない事をしたい!」と思い立ち、群馬から沖縄まで一人旅をしたそうです。
その移動手段がなんとママチャリ。
どうしてママチャリ?
「だって1番安いし簡単だし、電車とかはつまらないと思って」。
初日に73キロほど走ってくじけそうになったそうですが、無理かなと思いながらも「何とかなった」と言うちひろさん。
何とも大胆でそれを実行してしまうのが本当にすごいと思いますが、結局その旅でその後のパートナーと出会うのだから、人生何が起こるか分からないものですね。
旅行中、ずっとつけていたという「旅日記」を見せて頂きました。
「やっぱり、1日自転車こぎやってると、食事がおいしくて、それが1番の楽しみでした」
その食事の内容や出来事が絵日記にしてあり、「(夫の)フレッドと出会った日はここですね」と示してくれたページを恐縮しながら拝見すると、徳島の山中のゲストハウスでの出会いが書かれていました。
「…さよならが、久々に辛くさみしい。フレッド最高。あんなおもろいアメリカ人見たことない。(原文ママ)」との結び…。
お二人はここで出会う運命だったのですね。
「雪が積もるところに住みたい」
旅が終わって関東に戻ってから、数年後に結婚されたお二人。
フレッドさんの修士課程取得のためアメリカで暮らし、長男が生まれ、ちひろさんが仕事をするために日本に戻りましたが、フレッドさんにはある願いがあったのです、
それは、「(自分の故郷アメリカ・ウイスコン州のように)雪が積もるところで暮らしたい」。そして四季がはっきりしているところが良いと。
一家はインターネットで移住先を探し、車で現地を見るという事を続けて、移住者支援制度がある鮭川村にたどり着きました。
―――なぜ鮭川村に決めたんですか?
「なんと言っても探している時に役場に話を聞きにいったら、とてもフレンドリーな対応をして頂いて。最初から、『ぜひ住んで!フレッドにも仕事用意するから!」と大歓迎してもらったのが大きいですね。」
こういう言い方が適切か分からないけど、と前置きして
「うちは普通じゃないちょっとクレイジーな家。でも排除したりしないで、わりと面白がって優しく見守ってくれるところがありがたいです。もしかしたら『やるといったら私たちはやる』というオーラを出しているのかもしれないけど」
といたずらっぽくちひろさんは笑いました。
「やはり素敵な所なので、もう4年住んでいます。
冬は雪に埋もれてしまいますが、雪かきも楽しいし村内のエコパークでは子どもたちとスノーシュー(別名:西洋かんじき)で歩きます。雪上だから、普段歩けない場所も行けるんですよ。
春になると、山で山菜をとったり夏は川遊びをしたり、ここでしかできないことを子どもたちと一緒に経験し、自分も楽しみながら子どもたちの成長も感じています」
そして、新たな夢へ
今、ラーワー夫妻は新たな夢に向かって動いています。
それは村の閉校になった分校を借りて、地域の自然や生活と関わりながら子どもたちが生きる力を育む「アジャイルラーニングセンター」(ALC)を作ること。
朝集まって「今日何をする?会議」を行い、大人も子どももやりたいことを発表して決めます。昼食は可能な限り自炊。
活動は、畑作りや自然遊び、料理・木工や地域交流を行い伝統文化を学ぶなど、様々なことを計画しています。
「普通の日本の学校教育ではなく、もっと子どもたちが主体的に学べるところを、ここ鮭川の地に作りたいのです」
新庄出身で、ニュージーランドや北欧で現地の幼児教育を勉強してきた「元気なきかなす(※おてんばの意味)」だという伊藤亜弥さんも交えて、オープンに向けて精力的に活動しています。
いろんな子どもたちが自主的に学べる「場」が、鮭川村に新たに出来上がる日はもうすぐ。とても楽しみです!
■ ラーワーちひろさんをもっと知りたい方はインスタグラムを見てね!
https://www.instagram.com/chihiroad2/