「大道芸」というと、どんなことが思い浮かびますか?

 例えばジャグリングであったり、ハッと驚かされるマジックであったり、浮かぶことは様々です。実際に目にしたことがある方は、その場の雰囲気や拍手なんかが浮かぶかもしれません。

 山形でも、大道芸で人々を笑顔にしようと、活動している方がいます。

 

パフォーマーたつみさん(本名:辺見竜二さん)

尾花沢市出身。地元の工場に勤めながら、パフォーマーとして県内外のイベントに出演。マジックやパントマイム、ジャグリングを得意とし、中でもトレードマークの仮面をつけてのアニメーションダンスとコンタクトジャグリングは、たつみさんの代名詞となっています。

 

大道芸との出会い

「特になりたいと思っていたわけではないです」

 高校を卒業するころ、手品の不可思議さに魅せられてマジックを始めたたつみさん。親や友人家族に見せて、驚いてもらうのが楽しくて、それまで人前に立つ性格ではありませんでしたが、人に見せることのおもしろさを知ります。
 就職してからも趣味でマジックを続け、次第にジャグリングやアニメーションダンス、水晶を使うコンタクトジャグリングにも興味を持つように。

「そんな時に、ある大道芸人が山形に来るというのを知って、見に行ったんです」

 人通りの多くない山形の道で、その大道芸人は路上に人だかりを作りました。自然と笑顔になっている観客と自分に気づいて、「大道芸ってすごい」と感動。たつみさんは初めて「大道芸人になりたい」と志します。

「思い切って話しかけてみたら、いろいろ話を聞いてくれて、後押ししてくれたのもキッカケですね」

 それから約1年をかけて技を磨き、20104月、22歳の時に初の路上パフォーマンスを行いました。

「今でも覚えてます。3人でした。立ち止まってくれて、これから頑張りなよって100円玉を入れてくれて。嬉しかったけど、恥ずかしさと悔しさもありましたね。いただいた100円玉は、大事に取ってあります」 

仮面をつけてのアニメーションダンス(2023年春恋マルシェ)

 

 

 悔しさを経験しても、大道芸をやっていきたいという気持ちは消えなかったというたつみさん。知人の紹介で地域のお祭りのステージに立ったり、見てくれた人が誘ってくれたりして、多くのステージを経験しました。
 今では、山形県内のパフォーマーといえば、「パフォーマーたつみ」と言われるまでになっています。

「大道芸はやっぱり、実際見てもらっての臨場感とか、近くで見たときの驚きと歓声があっての一体感が楽しいのだと僕は思うので、生で見てもらうことの大切さを忘れずに見せていけたらいいなと思います」

 

「山形」で続けていくワケ

 大道芸の浸透が都会と比べまだまだ薄い山形県。
 都会で活躍するプロは、路上パフォーマンスのお気持ち(投げ銭)で生計を立てます。

 たつみさんはプロになることも考えましたが、本業が別にあるからこそ、楽しく続けていけるという思いもありました。加えて、始めたばかりの頃は自分のパフォーマンスが都会で通用するのかという不安もあったそうです。

「でも、ずっと続けているからこそ、技術が磨かれて自分の自信になってきてるんですよね。東北はいろんなところで呼んでもらうことも増えて、そういう弱気な気持ちはなくなってきました。今は、僕が山形で一番のパフォーマーだっていう気持ちでやってます」

 地元だからこその慣れ親しんだ住みやすさ、自然の中で新鮮な空気を吸って過ごすこの方が性に合っているとも話してくれたたつみさん。都会にはない良さに囲まれて、これまでパフォーマーとして活動してきました。そうしていると、見てくるものもありました。

「地元で過ごしていると、地域を持ち上げたいって言う人と出会うんですよね」

 グループや個人で活動する方と出会い、一緒に地元を盛り上げていきたいと思うようになったたつみさん。そうした想いを掲げるイベントへも積極的に出演しています。

「僕も山形を盛り上げる一員になりたいなって思っています」

 

出演した春恋マルシェは地域を元気にしようと活動する団体が運営しています

 

笑顔を広げる寄付活動

 今年(2023年)でデビューから13年。
 本業を続けながら、家族との時間も取りながらという多忙の中でも続けてこられたのは、目標があるからだとたつみさんはいいます。

 掲げた目標は大きく2つ。

・山形を笑顔にする
・山形に大道芸を広める

 そして小さな目標として、毎年行っている県内保育園への寄付活動です。
 観客からのお気持ち(投げ銭)の中から、毎年いくつかの市町村の保育園へ、寄付をしています。

「最初の4年間は全額寄付しました。金額の目標も作って、年ごとに増やしていって。目標を持つことで頑張れるし、達成出来たらモチベーションもあがります」

 一年目は目標を達成できませんでしたが、2年目は達成し、全額を赤十字に。3年目も達成し、赤十字と、地元の保育園に寄付しました。4、5年目で尾花沢市のすべての保育園へ。次を考えたときに、適当にするのではなく、また目標を立てようと思いいたります。

「県内全市町村に寄付をしようって。10万ずつしてるんですけど、その年にいただいたお気持ちから、毎年少しずつ、市町村を回っています。2市町村ずつと計算しても10年以上はかかりますね」

 寄付先も、今までお世話になった友人知人に関係のある所などを選んで、2022年で12市町村に寄付をしました。

2022年は最上町 あたごこども園さん、新庄市 パリス保育園さん、舟形町 ほほえみ保育園さんに寄付

 結局は自己満足、というたつみさんですが、保育園を選ぶのには目標に関係する理由があります。

「山形で大道芸を広めていくためには、自分が土台にならないとだめだなって思っています。子どもたちに知ってもらって、良い印象を持ってもらう事。山形全部を笑顔にするっていう目標も立ててますけど、実際どうするのってなったときに、親やおじいちゃんおばあちゃんって子どもが笑顔だと嬉しいじゃないですか。だったら僕のやるべきことは、子どもたちを笑顔にすることかなって」

 たつみさんは寄付先の保育園に、一つのお約束をお願いしています。
 それは、お金を「遊具」に使う事。おもちゃや自転車など、子どもたちが遊んで楽しい、笑顔になれるものに使って欲しいという想いを込めて、たつみさんは寄付をしています。

 

これから

「掲げた目標を達成して、山形に大道芸という文化を作りたいですね。でもそれは僕一人の力では無理なので、一緒にイベントを盛り上げてくれる仲間を探しているところです」

 最近では、マジックやバルーンアートなどで共にステージに立つ仲間も増えてきたといいます。
 そして嬉しいのが、たつみさんのステージを見て、子どもたちが大道芸に興味を持ってくれること。

「実はいま、弟子っていうか、教えている子がいるんです」

 小学6年生の時に出会った不登校の男の子。動画で大道芸に興味を持ち、親を通して連絡をくれました。彼はこの2月、たつみさんの誕生日に、初めて大きいイベントに挑みます。

「この子が僕の後を継ぐ感じで、うまくなってくれたらなって。楽しみです」


 山形でパフォーマーとして、見てくれる人に笑顔を届けるたつみさん。
 これからも様々なステージで、私たち観客を笑顔にしてくれることでしょう。

 

 ****

 

△パフォーマーたつみさん、そして教え子のイカタコくんが出演予定!