山の幸、きのこ。秋のイメージが強いきのこですが、実は季節関係なく収穫生産ができるって、知っていますか? 

 

 

大規模施設できのこを生産することにより、一年を通しておいしいきのこが食べられるようになりました。山形県でもきのこの生産は盛んで、生産量は全国9位。その中でも、最上地域は県内生産の7割を占め、全国で見ても11位の生産量を誇ります。

 

全国のトップ10に入るにもかかわらず知られていないという部分があるので、ここは私たちで情報発信をして、きのこ産業として確立していいんじゃないかと思ったんです。実際、生産者が今まで動いていなかったから伝わらなかったというのもあるし、きのこ需要、きのこファンを拡大するためには自分たちが動かないと」

 

「professionalきのこ山形」会長 木村勇智さん

 

そう語るのは、最上地域のきのこの専門家集団、「professionalきのこ山形」の木村勇智さん。木村さんたちきのこ生産者7名で構成される「professionalきのこ山形」は、2021年の4月に発足しました。山形で根付くきのこ産業について広く知ってもらい、日本のきのこ産業を持続可能な発展産業にする事を目標に活動をしています。

 

今回は、「professionalきのこ山形」の活動や想いを取材しました。

 

 

最上地域ときのこ

最上地域できのこ産業が始まったのは、今から約50年前と言われています。個人で小規模に行うことはあっても、大規模施設での栽培は鮭川村で始まったのが初でした。

最上地域は山に囲まれた自然豊かな土地です。山のふもとの大自然の空気をふんだんに吸ってきのこは育ちます。加えて、奥羽山脈を背負っての地下水の豊富さもあります。最上地域はきのこ栽培にうってつけの環境でした。

きのこ栽培は鮭川村を中心に最上地域、県内全域に広まり、生産組合ができると技術面や試作研修を重ねてきのこ産業は確立していきました。

 

「やっぱり空気と水が大事なので、山形でしか出せない質もあるんじゃないかと思います」

 

そして2021年の4月に、最上地域のきのこ生産者7名が集まり「professionalきのこ山形」が組織されます。前進の集まりとして6年を過ごし、満を持しての発足でした。

 

 

“集まり”ではなく“団体”にするという事

「言い出したのは、自分と最上まいたけの荒木君でした。もともときのこ生産者同士つながりはありましたが、品目が違うので、技術面や販売面まで話し合える繋がりではなかったんですが、そういうのを話し合う場を作ろう、と」

 

きのこ、とひとくくりにされていても、きのこはそれぞれ製法に違いがあります。原料も温度も作り方も違う品目を扱う生産者が、集まって情報交換をするというのはなかなかありません。果樹で言うなら、さくらんぼ生産者とりんご生産者が情報交換をしているようなものです。故に深い話をせずにいましたが、ちゃんと手を結んで情報共有と意識の共有をしていかなければと動いた二人により、最上地域のきのこ生産者による集まりが生まれました。

作っているきのこの品種は違えど、製法に共通する部分がないわけではありません。例えばきのこ育てるのに大切な湿度や温度のバランスや、それらを調節するために使っている機器の情報です。他にもベテラン生産者へ気軽に質問することができるようになったりと、この集まりは生産者に太いパイプを作りました。

 

「団体に、というのは自然な流れでした」

 

5年間を“集まり”で過ごすうちに、木村さんはちゃんと組織にした方が良いと考えるようになりました。きのこについて発信をしていくならば、発信をする母体が必要だと思ったのです。また、行政に意見を伝えるためには団体であったほうが伝わりやすいという面もありました。かくして発足したのが、「professionalきのこ山形」です。

 

 

「うちらみたいな団体が各県にできてくれたら、勝手にきのこ産業がもありあがると思うんですよね。まだ誰もしていないなら、まず最上でやってやろうって。そして、真似してもらわないと」

 

団体にして特によかったところは、みんなが同じ方向を向いて、みんなの力で進んでいけるということだと木村さんは言います。異なるきのこの生産者が手を取り合って協力していく、まさに理想の形です。

 

コロナの影響を受けつつ、活動した一年

professionalきのこ山形」はきのこ関連事業の専門家集団として、日本のきのこ産業を持続可能な発展産業とする事を理念に掲げ、4つ目的をもって活動しています。

  • きのこ生産技術の向上・開発
  • きのこ文化の創造・発信
  • きのこ経営基盤の強化及び販売促進
  • 環境負荷の低減ならびに循環型産業の構築

 

発足当時、これらの目的に沿った活動を計画しましたが、既に猛威を振るっていた新型コロナウイルスによってペースダウンを余儀なくされました。予定していたいくつかのイベントが行えなくなったのです。それでも、やり方などを工夫し、昨年は13の事業をやり遂げました。

 

イオンきのこ教室

県内のイオンを会場として、子ども向けのきのこ教室を開催。きのこクイズや作り方のレクチャーなど、子どもが楽しく学べるようなイベントで、今年も開催を予定しています。

 

 

ジモト大学とのコラボレーションによるレシピ開発

最上地域の高校生で構成されるジモト大学に参画し、高校生と共にきのこのレシピ開発をしました。使うのは、商品として出荷するにあたって出る“くず物”。根っこの部分など、店頭には並ばないけれど、実際は食べられる箇所です。それらを使ったレシピを高校生が考案し、生産者が実際に“くず物”として捨てられてしまう可食部を販売するという催しを、新庄駅ゆめりあにて開催しました。

また、同じくジモト大学参加生徒が考案した、きのこをふんだんに使った芋煮を後日会員が作り実食も行いました。普通はいれないなめこやマッシュルームなど、きのこづくしの芋煮は、良い出汁が出ていた美味しかったそうです。

 

 

「子ども達には、山形県の山林に囲まれた場所に少しでも関わって成長してほしいとおもいます。木や森が新たな命を生み、食・生活の支えになっているということをしっかり子ども達に知ってもらえたら、山形に住んでいる意味を将来的に感じてくれるんじゃないかな」

 

高校生に発信をしてもらうというのも、きのこの事をより知ってもらうため。持続可能を掲げる「professionalきのこ山形」の皆さんは、他にもきのこのレシピ集を作ったり、ラジオに出演したりと、幅広い世代にきのこの魅力を訴えています。

 

今年はこれらの活動に加え、6月と9月にはkitokito marcheに出店するなど、より活動の幅を広げていきます。

きのこが一年中楽しめることを伝えるため、提供するメニューは“季節感の無いもの”を心掛けています。

 

<今年度の主なイベント情報>

Kitokito marche 9/18
 新庄市エコロジーガーデンにて開催。

HJSキャンプテーマパーク 9月予定
 HJSキャンプラボとのコラボレーション。詳細は決まり次第professionalきのこ山形Instagramにて発信。

 

木村さんからメッセージ

「今は最上地域を中心に活動していますが、いずれは県内外に幅広く発信するために、もっと行動して、同じような団体ともタイアップをして、きのこ産業をもっと盛り上げていきたいと思います。

 そしてなにより、きのこは年中美味しく食べれます。でも、たぶん生産者が一番食べ方を知らないんです。なので、いろんな料理に使ってみて、食べた感想をInstagramで教えてください。できたら作った料理も上げてもらえるとありがたいです。いつかそういう人たちとリアルでつながるような機会も作れたら面白いですね。その時はきのこをプレゼントします(笑)」

 

 

「professionalきのこ山形」
会員 (有)マッシュハウス最上
   (株)最上まいたけ
   (有)舟形マッシュルーム
   (有)鮭川えのきセンター
   (農)オークファーム
   (有)熊谷伊兵治ナメコ生産所
   (株)縁の起

 


最上地域からきのこ産業を発信する「professionalきのこ山形」をご紹介しました。

実はきのこ大国な山形県の“実は”が取れることを願って、professionalきのこ山形の皆さんのご活躍を楽しみにしたいと思います!

 

みなさんも、スーパーに行った際にはぜひきのこの棚を見て、産地を確認してみてください。そして、一年を通しておいしいきのこを味わってくださいね。